口を開けると左顎が痛く開けにくい|20代女性の顎関節症の施術経過

はじめに

※ご本人の同意を得たうえで、個人が特定されないよう内容の一部を変更して掲載しています。

本記事は、一人の患者さまの施術経過をご紹介するものであり、同様の症状に対する施術結果を保証するものではありません。

顎の痛みや開けにくさ、関節音には、顎関節症以外の病気が関係する場合もあります。当院では歯科医療機関での診断や治療を尊重し、身体の状態を確認したうえで、姿勢や首・肩、顎周辺の筋緊張などに対する施術を行っています。

患者プロフィール

20代女性。

デスクワークを中心とした仕事に従事されており、趣味はゲームです。

以前、肩こりと頭痛で当院へ来院していたご友人からの紹介で、ご相談に来られました。

ご相談内容

高校生の頃から、肩こりを感じることがあったそうです。

大学卒業後、現在の仕事に就いてデスクワークをするようになった頃から、口を開けると顎が「カクン」と鳴るようになりました。

当初は音がする程度でしたが、次第に左顎を中心に痛みが現れるようになり、最近では、痛みのために口を開けにくい状態になっていました。

食事の際にも顎の痛みや引っかかりが気になるようになったため、歯科を受診したところ、顎関節症と診断されたとのことです。

歯科でマウスピースを作製し使用していましたが、ご本人が期待していたような変化が得られず、

「このまま口が開かなくなったらどうしよう」

と悩まれていた時に、ご友人から当院を紹介されました。

また、最近は顎の症状だけでなく、肩こりや頭痛も頻繁に起こるようになり、つらい状態が続いていました。

口を開けると左顎が痛く開けにくい

初回来院時の顎の状態

口の開閉動作を確認したところ、開口時に下顎が左側へ偏るような動きがみられました。

また、左顎関節付近に「カクン」という関節音があり、その際に引っかかるような動きと痛みが確認されました。

顎関節は、下顎頭、関節円板、靱帯、周囲の筋肉などが協調して動いています。

関節音や引っかかりは、顎関節内部の関節円板の動きや、下顎頭の運動が関係している場合があります。

ただし、外側から動きを確認しただけで、関節円板の位置や内部の状態を正確に判断することはできません。

今回は、すでに歯科で顎関節症と診断されていることを確認したうえで、顎の動きや筋肉、姿勢との関係を評価しました。

20代女性の顎関節症

姿勢と首・肩周辺の状態

姿勢分析では、主に次の特徴がみられました。

  • 頭が身体より前方へ出た前方頭位
  • 両肩が内側へ入る巻き肩
  • 背中が丸くなった猫背姿勢
  • 肩甲骨の位置や動きの左右差
  • 骨盤の位置や動きの左右差

筋肉の状態を確認すると、顎を動かす筋肉や首・肩周辺の筋肉に、強い緊張、硬結、圧痛がみられました。

特に緊張が目立ったのは、次の筋肉です。

  • 咬筋
  • 側頭筋
  • 胸鎖乳突筋
  • 僧帽筋
  • 後頭下筋群
  • 肩甲挙筋

顎周辺だけでなく、首・肩、背中、骨盤周辺、上肢、下肢にも全身的な筋緊張がみられました。

デスクワークや趣味による身体への負担

デスクワークやゲームなどで画面を見る時間が長くなると、頭が前へ出て背中が丸くなりやすくなります。

頭が前へ出た姿勢では、首や肩の筋肉が頭を支えるために緊張しやすく、下顎や咀嚼筋にも負担が加わる可能性があります。

ただし、前方頭位や猫背だけが、顎関節症の原因とは限りません。

顎関節症には、顎関節や咀嚼筋の状態、歯の接触癖、食いしばり、生活習慣、心理的な緊張など、複数の要因が関係することがあります。

今回の方については、顎関節への施術に加え、前方頭位、巻き肩、猫背、首・肩周辺の筋緊張を含めて身体全体を整えることが必要と考えました。

身体の状態と施術方針

初回来院時の状態から、次の点を重点的に施術する方針をご説明しました。

  • 顎関節に無理な負担をかけず、開閉しやすい動きをつくる
  • 咬筋や側頭筋など、顎周辺の筋緊張を和らげる
  • 首の深部筋群の緊張を和らげる
  • 前方頭位、巻き肩、猫背の改善を目指す
  • 肩甲骨や背骨、骨盤の動きを整える
  • 顎に負担が集中しにくい姿勢と身体の使い方を身につける

顎だけを部分的に施術するのではなく、姿勢や全身の緊張も確認しながら施術を進めることをご説明し、ご本人の同意を得たうえで施術を開始しました。

施術内容

背骨・骨盤周辺への施術

最初にうつ伏せの状態で、背骨や骨盤周辺の動きと筋肉の緊張を確認しました。

DRTを応用した軽い揺動刺激によって、背骨や骨盤周辺の過度な筋緊張を和らげ、身体全体が動きやすい状態を目指しました。

強い力で押したり、急激に身体をひねったりするのではなく、身体の反応を確認しながら穏やかな刺激で行いました。

骨盤・股関節・肩甲骨周辺への施術

次に横向きの状態で、骨盤周囲の筋肉を緩めながら、股関節の位置や動きを調整しました。

同時に肩甲骨周辺の筋肉へ施術を行い、肩甲骨の動きを妨げている筋緊張を和らげました。

骨盤、背骨、肩甲骨の動きを連動させることで、猫背や巻き肩による首・肩への負担軽減を図りました。

頚部への施術

仰向けの状態で、頚椎の位置や動き、首周辺の筋肉の状態を確認しました。

特に緊張が強かった胸鎖乳突筋、後頭下筋群、肩甲挙筋などに対して、痛みが出ない範囲で施術を行いました。

首を強くひねったり、急激な力を加えたりせず、筋肉の緊張と首の動きを確認しながら調整しました。

顎関節周辺への施術

顎関節への施術では、当院で用いているDMT手技を応用しました。

顎の開閉方向や左右差を確認しながら、てこの原理を利用し、無理のない範囲で顎関節の動きを調整しました。

同時に、咬筋、側頭筋などの顎関節周辺の筋肉へ穏やかな手技を行い、過度な緊張を和らげました。

顎を無理に大きく開けたり、強い力で位置を変えたりするのではなく、痛みや引っかかりが出ない範囲で慎重に行いました。

初回施術後の変化

初回施術後に、ご本人の無理のない範囲で口の開閉動作を確認しました。

施術前にみられた左顎の痛みや引っかかりが軽減し、日常的な会話や食事に必要な範囲では、口を開けやすくなっていました。

ご本人からも、

「さっきより普通に開けられます」

という感想がありました。

ただし、初回施術直後であり、顎関節へ過度な負担をかけないため、最大まで口を開ける検査は行いませんでした。

初回に変化がみられても、顎関節や周囲の筋肉の状態が安定したとは限りません。

日常生活で再び負担が加わる可能性があるため、継続して経過を確認することにしました。

施術開始から1か月の経過

最初の1か月間は、週1回のペースで施術を行いました。

顎関節周辺だけでなく、首、肩、肩甲骨、背骨、骨盤の状態も毎回確認しながら施術を継続しました。

1か月が経過した頃には、ご本人の申告では、食事や会話の際に顎の痛みや開けにくさで困ることは、ほとんどなくなっていました。

また、以前から悩んでいた肩こりについても、

「前より楽になってきました」

という報告がありました。

一方で、顎の開閉動作にはまだ不安定さが残り、前方頭位や巻き肩も完全には改善していませんでした。

症状が軽減しただけで施術を終了すると、デスクワークや日常生活の負担によって再び症状が現れる可能性があるため、次の1か月間も週1回の施術を継続しました。

施術開始から2か月の経過

施術開始から約2か月が経過した時点では、口を開閉した際の引っかかりは、ご本人の申告では感じなくなっていました。

食事や会話も問題なく行える状態が続き、左顎の痛みも落ち着いていました。

姿勢分析でも、初回来院時に目立っていた前方頭位や巻き肩に変化がみられ、首・肩周辺の筋緊張も軽減していました。

身体の状態が安定してきたため、来院頻度を週1回から月2回へ変更しました。

メンテナンス施術への移行

その後、さらに状態が安定していたため、月1回のメンテナンスへ移行することをご本人へご提案しました。

すると、ご本人から、

「通っているとよく眠れますし、身体も楽なので、しばらくこのまま通いたいです」

という、うれしいお言葉をいただきました。

睡眠の状態には、生活習慣や精神的な緊張など、さまざまな要因が関係するため、施術だけの効果と断定することはできません。

ただ、ご本人は顎の状態だけでなく、首や肩、身体全体の調子にも良い変化を感じているとのことでした。

現在も、身体の状態やご本人の希望に合わせて、月1~2回のペースで継続して来院されています。

現在の状態

現在は、食事や会話の際に顎の痛みや引っかかりを感じることはなく、日常生活に大きな支障は出ていません。

肩こりも初回来院時より軽減し、仕事や趣味を続けながら、身体の状態を維持できています。

今後も、顎関節の状態だけでなく、前方頭位や巻き肩、首・肩の筋緊張が再び強くなっていないかを確認しながら施術を継続する予定です。

院長からのアドバイス

顎関節症の代表的な症状には、次のようなものがあります。

  • 顎が痛む
  • 口が開けにくい
  • 顎を動かすと音がする
  • 食事の際に噛みにくい
  • 顎が引っかかる感じがする

今回の方は、左顎の痛み、関節音、開口時の引っかかりに加えて、前方頭位、巻き肩、猫背、首・肩周辺の強い筋緊張がみられました。

ただし、姿勢の悪さだけが顎関節症の原因というわけではありません。

顎関節症には、咀嚼筋や関節円板の状態、食いしばり、上下の歯を接触させる癖、頬杖、硬いものを長時間噛む習慣、心理的な緊張など、複数の要因が関係することがあります。

日常生活では、次の点に注意することが大切です。

  • 痛みが強い時に無理に大きく口を開けない
  • 硬い食べ物や長時間の咀嚼を控える
  • 頬杖を避ける
  • 上下の歯を長時間接触させない
  • パソコンやゲーム中に頭が前へ出すぎないようにする
  • 同じ姿勢を長時間続けない

顎関節症の診断や、関節円板・骨など顎関節内部の評価は、歯科や口腔外科などの医療機関で行われます。

マウスピースを使用しても症状が続いている場合や、急に口が開かなくなった場合、痛みが強くなっている場合は、使用方法を自己判断で変更せず、作製した歯科医師へ相談してください。

また、顎の腫れ、発熱、外傷後の痛み、噛み合わせの急な変化、顔のしびれなどがある場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。

当院では歯科での治療に代わるものではなく、身体の姿勢、首・肩や顎周辺の筋緊張、関節の動きなどを確認し、顎へ負担が集中しにくい身体の状態を目指して施術を行っています。

施術に対する反応や必要な期間、来院回数には個人差があります。その都度、顎の状態や日常生活への支障を確認しながら、施術計画を調整していきます。

すがはら筋整骨院